Movie & Photos by WSL. Text by colorsmagyoge.

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2015 WSL World Champ, Adriano de Souza(BRA).

 

ブラジリアン初のパイプマスターズ・チャンプに輝いたうえ、

2015年のワールドチャンプも獲得したAdriano de Souza。

さらに2014年ワールドチャンプのGabriel Medinaが

ブラジリアン初のトリプルクラウン・チャンプに輝いたところで

今シーズンも冷めやまぬブラジリアン・ストーム。

Mick Fanningのファンが多いであろう日本では、

Mick Fanningが4度目のワールドタイトルを獲得できなかったことに

がっかりする人も多い(colorsmagもそのひとり)と思うが、

しかし、厳しい勝負の世界において、

28歳のAdriano de Souzaがどういった想いで

今シーズンのワールドタイトルを獲得にたどり着いたのかが

ものすごく気になり、colorsmagなりにいろいろと調べてみたが、

英語圏のメディアではあまりにも多くが語られておらず、

ならばブラジルのポルトガル語メディアはどうかと

ググること数時間かけたところで、

様々なエピソードが浮き彫りとなり、

胸が熱くなったので突如ここに突然のコラムとしてお届けさせて頂きます。

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Mason Ho & Adriano de Souza, after Heat2 of Semi.

 

 

ワールドチャンプ獲得の最後のチャンスが懸かった

今回のBILLABONG PIPE MASTERSに挑む上で、

Filipe Toledo、Gabriel Medinaといったほかのブラジリアンたちは、

メインスポンサーのHURLEYやRIP CURLにパイプラインが見える

海の目の前という好環境を提供されているなか、

メインスポンサーがブラジルのドメスティック・ブランド

”Hawaiian Dreams”であるAdriano de Souzaは、

その環境を得ることができない状況にあった。

しかし、思い立ったAdriano de Souzaは、

パイプラインの目の前に家を持つJamie O’Brienに

”玄関でもいいから泊まらせてくれませんか?”

と頼み込み、その了承を得ると試合の1ヶ月前にハワイ入りを果たし、

それからというものの、

毎朝日の出と共にパイプラインで練習に明け暮れたという。

それは未だかつてパイプラインのコンテストにおいて

ブラジリアン・サーファーが優勝したことがなかったことに加え、

パイプラインの試合での自身の最高成績が9位であることに

起因していたに違いないだろう。

自らの弱点を克服するべく、練習あるのみ。

それが世界一流のトッププロサーファーAdriano de Souzaが

パイプラインでのコンテストに勝つために選んだ唯一の手段であり、

ストイック、まじめ、努力家とよく言われる彼の人柄を

何よりも伝えるエピソードだと言って過言ではないだろう。

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Adriano de Souza.

 

 

そんななかで迎えたBILLABONG PIPE MASTERSでは

ラウンド2でJack Robinson、ラウンド3でGlen Hall、

ラウンド4ではAdam MellingとJosh Kerr、

クォーターファイナルでは再びJosh Kerrを下して

セミファイナルへラウンドアップ。

さらには、Mick Fanningがセミファイナルのヒート1で

Gabriel Medinaに敗れ、迎えたセミファイナルのヒート2で

Mason Hoを倒した時点で見事ワールドタイトル獲得決定となった

Adriano de Souzaは、ヒーローインタビューの際に、

Mick Fanningとその家族に向け、

「お兄さんを亡くしたMickのことを考えると、自分がワールドタイトルを取ってしまったことがとても申し訳ない気持ちです」

といったニュアンスの言葉を贈りつつ、

かつては国連にして「世界一危険な地区」と認定されるほど

深刻な治安問題を抱えていたサンパウロにあるグアルダという

同じ街で生まれ育った弟のような存在であったRicardo Dos Santos(2015年1月にビーチパーティーをしていたミリタリーコップに注意をして24歳の若さで射殺されたことで世界中に衝撃を与えたブラジルを代表するビッグウェイバー)

への敬意を表し、AdrianoはRicardoと同じ二の腕の裏側にあたる

上腕三頭筋に「強さ」「バランス」「愛」という3つの言葉からなる

タットゥーを入れたエピソードを話し、

「Ricardo Dos Santosにこのタイトルを捧げたいと思います。「強さ」「バランス」「愛」それは自分が今年ワールドタイトルを獲得するために必要な要素でした」

と結んだ。

しかし、まさに熾烈なワールドツアーを戦い抜いてきた

Adriano de Souzaを何年間にも渡って突き動かしてきた

核心に迫る言葉がAdriano自身の口から発せられたのは、

このRicardoへの思いを述べたあとに

今回のハワイで自分をバックアップしてくれた

Jamie O’BrienやJason Fredericoに感謝の言葉を述べた後のことだった。(下に掲載させていただいた動画の3分36秒より)

 

 

それは遡ること、Adriano de Souzaが

サーフィンを始めるきっかけとなった幼い頃のこと。

「そして何よりも、自分が貧しかった幼い頃に、なけなしの$7で最初のサーフボードを自分に買い与えてくれた兄のAngelo de Souzaにこのワールドタイトルを捧げたいです。このワールドタイトルはすべてあのとき兄が買ってくれた$7のサーフボードのおかげです」

とインタビューの最後に涙を流しながらそう語ったのだった。

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きっとそれは、貧乏だったAdrianoが辛くてくじけそうになったときに

必ずよぎる心の深いところに存在する家族への愛であり、

抑えることのできない溢れる出る想い出に押しつぶされたAdrianoには

$7で兄が買ってくれたサーフボードで初めて波に乗った

サンパウロの海岸が鮮明に写っていたに違いない。

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Above : Adriano de Souza. Bolew : Mick Fanning.

 

 

突然兄を失い、4度目のワールドタイトルを逃したMick Fanning。

そして貧しい幼い頃に兄がなけなしの$7で買ってくれた

サーフボードを胸に戦い続けてきたAdriano de Souza。

最終的にはこの2人によって繰り広げられた

ワールドタイトルレースが熾烈極まりなかったのを納得せざるを得ず、

いずれにしても世界で戦い抜くトップアスリートたちは、

それぞれ何かを背負い、

それがゆえに命がけで自分を限界までプッシュし

限界を乗り越えているのである。

昨日にあたる12/19(土)の記事で”Mick Fanningこそ

今シーズンNo1のレジェンド!と言いたい”とお伝えしたばかりであるが、

2015年のワールドチャンプは紛れもなくAdriano de Souza!!

この場を借りて改めて、

2015年ワールドチャンプ獲得おめでとうAdriano de Souza!!

そしてこれからも続くであろうブラジリアン・ストームに乾杯しつつ、

これに続いて今後巻き起こるであろう

ジャパニーズ・タイフーンに大いに期待したい!!!

 

Source :

>>globo.com

>>surfingmagazine

>>wsl

 

 

 

 

 

yoge
サーフィン・プレビュー/吉田憲右著・泉書房、古都鎌倉ミステリー旅/吉田憲右著・コスミック出版など数々の書籍を発行し、2000年にTRANSWORLD SURFの外部スタッフとなったのをきっかけにメディア界に参入。 2001年から2009年10月まで月刊SURFING WORLDの編集部兼カメラマンとして勤務。 その経験と共に、第1回NSA東日本サーフィン選手権大会Jrクラス3位、2年連続THE SURFSKATERS総合チャンプなどテストライダーとして培ってきた経歴を活かし、サーフィンを軸としたスケートボード、スノーボード、ミュージック、アート全般をひとつのコーストカルチャーとしてとらえ、心の赴くままにシャッターを押し、発信し続ける。 >>>出版物 >>>プライベート撮影問い合わせ