Photos & Text by yy.
2016年の初夏のある日、この季節のカリフォルニア特有な、
どんよりとした天気のジューングルームが続く中、
ダナポイントにあるChristian FletcherとMike Maldonadoが運営する
Madhouse Kustomzに再訪問する機会に恵まれた。
colorsmagではすでに数回ほど触れてはいるが、
ここMadhouseは大人の悪ガキのアジトと言う形容詞がピッタリな造りの建物であり、
中に無造作に転がるバイク、ボード、工具、ブランクス、その他得体の知れない物体と
そこに出入りする個性的な人物達が織りなすボードカルチャーの情景だ。
この建物は1960年代に世界で初めてファクトリーボードとして量産された
HOBIEの最初のファクトリーであったことも再度明記しておきたい。
Madhouse Kustomzではサーフボードとカスタムバイクが製作されているが
このどちらも全ての工程はChristianとMikeの二人で行われている。
カスタムバイクは非常に時間を要するために、
その工程は一台数ヶ月から半年以上にも渡る作業ではあるが、
サーフボードもバイク同様に、かなりの多くの工程が施されている。
幸運にも今回はサーフボードの製作工程にを密着することが出来たのが、
そのアメリカン魂の宿る職人作業には、このサーフボードが何故に
こんなに高価なのかが良く理解できた。
最初の工程は、Christianが軽量EPSのMarkoフォームを
シェイプするところから始まる。
こちらに関してはある程度の形状は完成しているのであるが、
EPSのフォームの気泡たとえどんなに小さくても、
後のグラッシング浸透に大きく影響するので、
Christianのシェープ後に更にMikeが気泡一つも逃さない様に
徹底的に、そして丹念にシェープを完成させる。
次はChristianの本領が発揮される出番であり、
最もアーティステックな部分でもあるボードペイントだ。
ブラックライトの設置されたシェープルームに篭り、
オーダー主の希望カラーを基に色取り取りなペイントを施し、
この世に一つしかないボードペイントを完成させる。
当たり前の話ではあるがOnly Oneの
Christian Fletcherが描くオリジナルペイントである。
そして完成に向かってのグラッシングとコーティングの工程になるのだが、
こちらも通常のボード製作作業より倍の時間を要する工程が待っている。
まずはMikeがボトムに最初のカーボンケプラーを巻く。
ケプラーの中心となる位置、
そしてコンケーブの入った複雑な形状のレールも周りもケプラーの生地が
重なり合うことも無いように全ての流れを計算しながら、素早く作業をする。
そして今度はデッキ部分へのカーボンケプラー作業となるが、
こちらも先に完了しているボトム部分へのケプラーのラインと
縦横が完全にマッチするように、寸分も狂わない職人技術を要求される。
これらの作業のベースとなるエポキシベースの樹脂は
温度や硬化までに掛かる時間等すべて計算された絶妙なタイミングを
必要とするので、その段取りだけでも相当な作業であることは間違いない。
そして最後は車の光沢に使用されるオートモーティブコーティングを掛け、
何度も磨き上げて、限界まで軽量化し磨き上げることで完成となるのだが、
こちらの工程に限って言えば今までの作業に輪をかけて時間を要する作業であり、
このボード達が何故にここまでもピカピカに輝くかも納得できる。
まさに物作りに対して一切の妥協を許さない古き良き
アメリカン職人魂が生み出す賜物である。
しかしながらボードデザイン、材質、カラーリングなどは、
過去に例の無い最先端の創造物である。
誰もやらないことをやってしまうのはある意味Christianの専売特許でもあるが、
80年代彼の功績が万人に理解されるまで何年も要した様に、
この完全家内制手工業型サーフボードが理解されるのも、
また数年を要するのでは無いのではあろうかと考えてしまう。
いずれにしても確実に言えるのは、オルタナスタイルでもなく、
レトロスタイルでもなく、ましてやマスプロダクションスタイルでもない
完全にOne And Onlyなスタイルなのは間違いないであろう。
現在、日本においてMadhouse Kustomzのボードの流通は
ほとんど皆無と言ってもよいが、こちらの写真にあるボードは、
渋谷にあるセレクトショップMortarにて
2本のみ別注ボードとして展示及び販売されている。
わざわざ見に行っても良いほど一見の価値がある板であるとも付け加えておこう。
https://www.instagram.com/mortar.tokyo/
https://www.instagram.com/madhouseboa