Photos by FIREWIRE. Text by colorsmagyoge.
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流体力学の理論をサーフボードデザインに落とし込み、
それまではあり得なかったスクエアノーズなど、
サーフボード界に革命を巻き起こしてきた
天才的才能を持つ世界一流シェイパーTomoことDaniel Thomson。
そんな彼が最近、ツインフィッシュのビッグウェイブ用のガンを作り、
それをKelly Slaterがワイメアで、
Peter Melがマーヴェリックスで密かにテストしているという。
その謎のビッグウェイブ用のツインフィッシュ・ガンについて、
つい先日に来日を果たしていたTomo本人に突撃インタビューを決行した。
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ツインフィッシュ・ガンを作るきっかけについて聞かせてください。
あのツインフィッシュのガンについては、Stuart Kennedyと一緒にWSLのイベントでポルトガルに行った時にPeter Melと会って、ちょうどその時にツインフィッシュでビッグウェイブ用のガンを作りたいと思っているという自分のアイディアを話してみた。
そしたら、Peterが「ぜひ乗ってみたい」ということになって、最初の1本目はPeter Melにシェイプしたのが始まりだった。
2016年のことでした。
それからPeter Melがマーヴェリックスをはじめとした世界のビッグウェイブでテストしてくれて、話しを聞いてみたら「全然調子いいからこのままどこも変える必要がない」というフィードバックが返ってきたんです。
それならばと思いKelly Slaterはもちろん、Shane Dorian、Jamie Mitchelにもシェイプしてテストをしてもらうことになって、Kelly Slaterなんかはそのツインフィッシュのガンでワイメアや巨大マカハをライドしてくれた。
みんなから「調子いい」というフィードバックが返ってきたので、ちょうど2017年の年末にFIREWIREに行って「このツインフィッシュのガンをもっと開発して行きたい」という話しをしてきたところでした。
ツインフィッシュのガンの大きな特徴は?
ツインフィッシュ・ガンのボトムにも他の小波用モデルと同じくクアッドコンケーブが入っているんだけど、小波用のクアッドコンケーブとは大きな違いがあって、小波用のクアッドコンケーブが大きなシングルコンケーブの中に小さな4つのコンケーブが入れられているのに対し、今回のツインフィッシュ・ガンのクアッドコンケーブはVeeボトムの中に小さな4つのコンケーブが入っていて、極端に言うと、ジェットスキーの船底みたいになっています。
ビッグウェイブでは、ものすごいスピードでもよりレールを切り返しやすいようにVeeボトムの方が良いのですが、ただのVeeだと水をホールドして加速を得ることが難しいので、そのVeeの中にさらにクアッドコンケーブを入れることによって、レールは切り返しやすいままターンにドライブ感を持たせました。
ライディング中、片方のレールを傾けてターンを行う時に、サーフボードのストリンガーから半分だけが水の中に入った状態になります。
そんな時でも、片方だけのフィンとボトムのクアッドコンケーブの半分だけの部分が、小さなVeeにダブルコンケーブのシングルフィンとして機能するので、波に食いつくようなターンにドライブ感も与えてくれるという利点があります。
見るからに特徴的なデッキコンケーブとレールデザインの組み合わせについて
通常9、10フィートの長いボードをシェイプするとなると、それなりのボリュームになってしまいます。
パドルの時点から一瞬が明暗を分けるビッグウェイブのドロップでよりスピードを得るためには、確かにボード自体にそれなりの浮力を持たせることは大切なのですが、結局そのままの厚みをレールまで持っていってしまうと、分厚くなり過ぎてチューブの中だったりダウン・ザ・ラインでレールを入れたい時にレールが入らなかったりします。
なので、それを解決するために今回のツインフィッシュのガンでは、センターの厚さ4インチ(10cm近く)と十分な厚みがあるデッキコンケーブに、レールエンドにかけて普通のショートボード同様の1インチちょっとまで極端に落とされたレールを組み合わせることによって、パドルやドロップでの加速力を保ったまま、いざ波にドロップしてライディングがはじまってからも、波にレールを弾かれずにドライブターンしやすいようになっています。
ビッグウェイブ用のガンのデザインに、なぜツインフィンとフィッシュテールを選んだのですか
ビッグウェイブのドロップで少しでも速くボトムに滑り降りたい時、より加速を得るためにはある程度テールエリアにもワイドさとボリュームを持たせることが大切です。
たとえば、波の面に対してサーフボードがフラットな状態で滑っている時はワイドでボリュームのあるテールがより加速力を生み出してくれます。
その一方でレールを入れたターンを行っている際にはフィッシュテールの片方だけが水に入った状態となり、ピンテールのシングルフィンとして機能してさらなる加速を生みます。
なので見た目はツインフィンでフィッシュテールのビッグウェイブ・ガンに見えますが、実際には左右それぞれにピンテールのシングルフィンがくっついて一つになっているようなイメージだとわかりやすいかと思います。
フィンはなぜキールフィンなのですか?
キールフィンは通常のツインフィンのフィンと違い、その特徴的なデザインを見てもわかるようにベースが長く広い分、より多くの水をホールドすることができます。
ビッグウェイブでツインフィンに乗るとスラスターやクアッドのボードに比べてルースな乗り味になるイメージを持つ人が多いと思いますが、このツインフィッシュのガンが持つキールフィンについては、どちらかというとツインフィンというより1950年代にBob Simmonsがビッグウェイブ用のボードとして生み出した”シモンズ”のデザインからヒントを得てます。
フィンのベースが広い2つのキールフィンを平行になるように垂直に立てたパラレル・フィンというシモンズのデザインに自分なりの新しい技術をインプットしてさらに進化させた形になってます。
このモデルの正式な名前は?
まだ販売用としてないから正式な名前はないんです。まだまだ研究段階なのでこれからもさらに開発を進めて行って、満足できるものが出来上がったら市場に出したいと思ってます。だからまだ名前はないんです。
ありがとうございました。完成を楽しみにしてます。
追記
もしこのTomoが現在開発中のツインフィッシュのガンが完成したら、それと同時に世界のビッグウェイブサーフィンにおけるビッグウェイブ・ガンに対する既成概念がすべて崩される日が来るかもしれない。
いずれにしても流体力学を理論的にサーフボードデザインに取り入れることで、今までも数々の革新的かつ常識を覆すようなサーフボードデザインを生み出し、世界のサーフシーンに大きな影響を与え続けてきたTomoことDaniel Thomsonの今後の動向からさらに目が離せなそうだ。