Photos by Nick Nakamura & colorsmagyoge. Text by colorsmagyoge.
真夏の日差しが刺さるように照りつける中、ビッグウェイブ・ワールドチャンプでBILLABONGのアイコン的存在であるShane Dorianが、11歳の息子Jackson Dorianと共に来日を果たした。
その目的は7/8(日)にムラサキ湘南オープンの会場である鵠沼海岸で16歳以下のキッズサーファーたちを対象にしたWSL Japan主催の大会”BILLABONG Super Kids Challenge”の応援と、ビッグウェイブ・サーフィンをテーマとしたドキュメンタリー映画”VAGUE A L’AME -Wave Of The Soul-“の上映を行なうこと。
今回は、そんなミッションをこなす中で過ごしたDorian親子の日本トリップの模様をお届け!
Shane Dorian & Jackson Dorian.
鵠沼海岸での”BILLABONG Super Kids Challenge”と、藤沢市民会館で行なわれたドキュメンタリー映画”VAGUE A L’AME -Wave Of The Soul-“の上映会を無事に終えたDorian親子は、翌朝となる7/9(月)に湘南を出発。
次なる映画の上映場所である伊豆を目指す。
ちょうど台風8号マリアからのグランドスウェルが届きはじめたこの日、車窓からところどころ見える海を見ては、「数年前にDane ReynoldsやJohn John Florenceがスコアしたチューブの波はここか?」とか「この磯は大きなうねりが入ったときにはできる場所なのか?」など、来日経験豊富なShaneにして初めてのエリアとなる海岸線に終始感動しつつ、特に湯河原のビーチが見えたあたりではいきなり「おい!ジャクソン見ろ!いつも行く島の反対側のビーチによく似ているな」と興奮気味で、どうやら地元ビッグアイランドの島の反対側に砂の色からビーチの形、そして波の形に至るまで湯河原にそっくりなビーチがあるらしい。
Shane Dorian.
思えばShane Dorianといえば、Kelly SlaterやRob Machado、Ross Williams、Taylor Knoxたちと共にサーフムービー界の巨匠Tayler SteeleのMomentumシリーズにレギュラー出演していた90年代のサーフスターのひとりで、まだインターネットやiphoneがなかった当時、VHSビデオのテープが擦り切れるほどShane Dorianのサーフパートを繰り返し見てた憧れの存在。
その当時からの思い入れが強過ぎて、せっかく近くにいるが恐れ多くもなかなか話しかけられない緊張感に襲われつつも、無事に伊豆に到着。
このエリアの中でもメインブレイクのひとつである多々戸ビーチに降り立ち、波チェックするも混雑気味の肩前後の波を目の前に着替える様子もなく、とりあえずは宿にチェックインすることに。
この宿がまた、海が目の前に見える素晴らしい立地条件に位置しており、向かって右側に見える小さなヘッズからは、不規則ながらライダブルなレギュラーがブレイクしており、しかもサーファーの姿はゼロだった。
早速サーフィンしようということになり、まさに親子水入らずのシークレット的セッションがスタート。
Shane Dorian & Jackson Dorian.
ビーチからエントリーせず、わざわざ右側のヘッズの岩場の上を歩き、波とのタイミングを見計らってジャンプインして行くところはさすが。
沖のラインナップにたどり着くと、Shaneがプッシュしてjacksonを波に乗せてあげると、また沖に出てはJacksonをプッシュして波に乗せてあげる。
Shane Dorian & Jackson Dorian.
「僕にとってお父さんは偉大な存在です。いつも自分をサポートしてくれるし、何よりもサーフィンがうまいです!」
と、父について聞いたとき、そう即答したJacksonだったが、波に乗ればその小さな体からは想像できないプロ級のスキルで水中カメラの目の前をエアで飛び越え、リップで大きなスプレーを上げる。
Jackson Dorian.
わずか数時間ばかりの親子セッションを終えると、その右側のヘッズからブレイクするレギュラーには、”Jackson Right”というポイント名が付けられた。
Dorian Family & Naoto Suzuki’s Family.
台風8号からのグランドスウェルがピークに達する予報となっていた7/10(火)は、ローカルでプロサーファーの鈴木直人氏のオーガナイズの元、早朝から某リーフブレイクへ。
大きなロックが転がるワイルドな磯にグーフィーがブレイクするその波をみて、若いJacksonは早速ワックスアップしはじめ、この日から合流を果たしたBILLABONG Japanライダーのモンちゃんこと矢作紋乃丞と共にパドルアウト。
Monnojo Yahagi.
セットでオーバーヘッド前後のパワフルな波を舞台に、モンちゃんのニュースクールなフィンズフリーにJacksonの元気溢れるターン、さらには念願のいぶし銀のバックサイド・ドリアン・リップが炸裂して電気ビリビリ状態。
Shane Dorian.
またしてもJacksonをプッシュしてはセットのいい波に乗せてあげるShane Dorianの父親ぶりにも感動しつつ、セッションが温まってきたところで鈴木直人プロも入水となり、まるでこの波でのお手本を見せるかのごとく、奥のピークからテイクオフしては往年のバックサイドターンを連発した。
Naoto Suzuki.
前述した通りこのシークレットリーフは普段のビーチとは違い、大きな岩がゴロゴロした波打際から海へ出入りしなくてはならない手強い磯で、地形的にも潮の流れ的にも海に入る場所と海から上がる場所が異なった。
Shane Dorian.
特にその海から上がる場所は一歩間違えるとショアブレイクと共に岩に叩きつけられる危険性すらあったが、しかしそこは、さすが世界中の危険な海でサバイブしているビッグウェイブ・ワールドチャンプのShane Dorianと言った感じで、誰も何も教えなくても1番安全な場所を見極めて息子のJacksonと共に海から上がってきた姿に、このエリアを拠点とするレジェンド・フォトグラファーの水口さんも驚いていた。
最高の1ラウンドを終えると、午後には宿に戻り、夕方からスタート予定の映画”VAGUE A L’AME -wave of the soul-”の上映会までの間に、一度ローカルサーファーがオーガナイズしてくれたシークレット・ランプでスケートセッションを堪能すると、またしても宿前の右側のヘッズから割れるJackson Rightでの親子セッションとなった。
Jackson Dorian.
Shane Dorian & Jackson Dorian.
「日本は僕にとって、息子のJacksonを絶対に一度は連れてきてあげたいと思っていた場所でした。
Jacksonには日本人の血も流れています。今回の日本トリップは息子のJacksonにとっては生まれて初めての日本トリップで、彼が大人になってこの旅を振り返った時に素晴らしい思い出になるに違いないと思ってます。親子でこうしていろいろなところへ行き、一緒にサーフィンして、Jacksonと日本でサーフトリップができたことは僕にとっても特別な思い出になりました」
今回のトリップを振り返り、そうコメントを残してくれたShane Dorianであるが、今回のDorian親子の旅は、あくまでも波をスコアするためでなく、親子の時間を日本で過ごし、一生の思い出を共有することにあった。
そこにたまたま台風8号のグランドスウェルが入り、
「台風スウェルをスコアして、天気も良く、ロコサーファーたちが地元のスペシャルな海へ連れて行ってくれたり、本当に親切にしてくれました。本当に感謝しています。」
と予想もしない展開となり、貴重な日本の台風でのライディングを見ることができたのは本当にラッキーなことだったに違いない。
夕方から下田文化会館でスタートとなった”VAGUE A L’AME -wave of the soul-”の上映会には、なんと180人以上の人が押し寄せ、席が足らず立ち見状態の満員御礼。
日本初公開となったこの映画は、Shane Dorian、Benjamin Sanchis、Jack Robinson、Justin Becretといったビッグウェイバーたちがポルトガルのナザレ、マウイのジョーズなど世界の名だたるビッグウェイブに挑む姿を追ったもので、超高画質のスーパースローで観るその巨大な怪物波は、見ているだけでも死んでしまいそうなくらいの恐怖を感じるには十分だ。
日本では今後上映されるのかは未定であるが、チャンスがあればぜひ一度見ておきたい鬼必見の作品であることを付け加えておきたい。
「長い一日だったね」
上映会が終わってからディナーを食べながらShane Dorianが言った。
ディナー終盤になってJacksonに目を向けると、一日中遊びまくって疲れていたのだろう、いつの間にかShaneの膝枕で眠りについていた。
迎えた今回のトリップDAY3の7/11(水)は、波のサイズもダウンということで、ゆっくり目にスタート。
多々戸と並ぶ伊豆エリアのメインビーチである白浜の前にある今村厚プロが営むIRIE Cafeに車を止めて白浜神社を参拝し、目の前のビーチに出ると小さいながら形のいい波が。
「サイズの小さいロウワー・トラッセルズみたいな波だよ!」
と、興奮気味のJacksonがモンちゃんと一緒に無邪気に海へ飛び込んでいき、ここで軽く1セッションすることに。
Atsushi Imamura.
「今回、Jacksonを連れて来れたことで、初めて日本を見る息子の目線を通して日本というものを改めて見る事ができ、まるで自分が初めて日本に来たときのような不思議な感覚になれた事が1番よかった。」
日本に来たのはこれで20回以上目だと言っていたShane Dorianであるが、Jacksonと旅を共にすることでまた新鮮な日本の旅を味わうことができたようだ。
「初めて会う人々はもちろん、波、食べ物、カルチャーに触れるJacksonを通して新鮮な気持ちで旅できたことは、いつものように自分だけで世界を旅していたら絶対に感じることができない感覚だった。それはまるで自分が子供に戻ったような不思議な感覚でした。」
「今回の旅で1番楽しかったのは、う~ん、全てが楽しかったです。体験した全てのことが最高でした。」とJackson.
ビッグウェイブを求めて世界各国を旅して周り、多忙な一年間を送るShane Dorianにとって、息子と共有できる貴重な時間。
「この日本の旅の後もJacksonとの海外サーフトリップの旅は続くんだけど、パスポートを持って飛行機で違う国へ行き、また違う人たちとあって、その全てがJacksonにとっては初めての経験であって、そういう感覚を息子を通してシェアできるのは本当に素晴らしいと思います。」
サーフィンはあくまでも個人競技である。
たった一人であっても十分に楽しめるところがチーム競技にはない良いところでもあるが、世代を超えて波に乗るという同じ喜びや楽しさを親子や仲間と共有できる素晴らしいスポーツでもある。
90年代のスーパースターShane Dorianが、20年の時を超えて息子のJacksonと共に来日を果たし、共に過ごした数日間に密着するチャンスに恵まれ、改めてサーフィンがつなぐ家族の絆の、ひとつのお手本を学ぶことができた価値ある今回のトリップとなった。
この後、colorsmagでは今回のShane DorianとJackson Dorian親子の旅を収録したスペシャル動画を前編と後編の2回に分けて発信予定!
そちらの方もお楽しみに!!