Photos & Text by colorsmagyoge.

 

11月某日。

西高東低の気圧配置による冬ならではの日本の波をスコアするべく、日本屈指のウェイブハンターであり世界的チューブマスターでもある松岡慧斗の予測を元に、村上舜、村上蓮の村上兄弟の3名と共に日本海某所へ。

夜通し車を走らせ、太平洋の反対側の海へ出てみると、波はまさかのオンショアの腰腹。

 

数日前の予報を見てこの日のトリップを組んだものの、前々日になってみると風が止まない予報に変わり、しかしながらサイズはありそうだったのでどこかしら風を交わす場所をサーチしてみるのもいいかと思いここまで来てみたが甘かったか。

「もしかして、今回は外したか」

目当てのポイントをチェックするべく海岸沿いの道をひたすら北上していく車内は、誰もそれを口にしないが、誰もがそう思っているに違いない何とも言えない空気感に包まれていた。

ビーチの左右が小さな岬と巨大なロックで囲まれたコンパクトなビーチにたどり着くと、そこは幾分かマシそうなコンディション。

しかし、それでも波は小さく、そしてオンショアで、まるで毎年QS1500”ムラサキ湘南オープン”が開催される湘南の鵠沼のオンショア波のような波であった。

Keito Matsuoka.

 

外に出ると風が冷たく寒いので、しばらく車の中から波チェックするが誰もgoする雰囲気はなく、仮にこの波で撮影したとしても相当な大技でも決まらない限りは無駄になってしまいそうなほど。

しかし、それでもサーフィン欲を抑えきれない村上舜にはいい波に見えるらしく、「あのセクションすげえエアとかしやすそうじゃないですか?」なんて言いながらひとりでやたらテンションが高く、「俺ちょっとサーフィンしてきていいですか?慧斗君はやらないですか?おい蓮、行くぞ!」

とウエットスーツに身を包むと足早に海へと飛び込んでいった。

そんな舜を横目に、松岡慧斗と村上蓮に至っては、海に入る気配はまったくない。

Shun Murakami.

 

実際に舜が波に乗ってみると意外と腹胸前後のサイズがあり、いい波をつかめば3から4ターンほど入れられるライダブルな波だった。

しかし、強いサイドからのオンショアが波に対してレギュラー方向からグーフィー方向へと吹き抜けるディレクションだったことから、舜が望んでいたエアをするには空中でボードが追い風を受けることとなり、ボードが体から離れていってしまうため、たとえ飛んでも着水するのが難儀であった。

そのことも手伝い、さすがの舜も1時間足らずで海から上がってきてしまい、夕方サイズアップすることを心から願いつつ、ランチタイムとなった。

日本海ならではの美味しい海鮮料理に舌鼓を打ちつつ、ゆっくり目で午後の波チェックへ向かうべく海へ出てみると、まだまだ強烈なオンショアながらもサイズが急激にアップしていた。

これならばと午前に舜がサーフィンをしたコンパクトなビーチへ向かってみると、何と波は同じ日の同じ場所とは思えないほど荒れており、時折頭半オーバーのセットが入るコンディションとなっていた。

Ren Murakami.

 

しかも、強烈なオンショアにも関わらず、波によっては底掘れチューブを形成。

「これで風がなかったら凄そう!」

興奮して誰かがそう言うと3人は急いでウエットスーツに着替え入水していった。

しかし、冷静に見れば海はスープだらけの真っ白で、もちろんビーチなのでわかりやすいカレントなども存在せず、たとえ上級者であってもゲッティングアウトはかなりハードなものとなることは明らかであった。

Shun Murakami.

 

事実、セッションの途中で一般サーファーの方2名が板を持ってビーチに降りてきたが、足まで海に入ったところで立ち止まり、しばらく波を見て無理だと判断したのか、沖に出ないまま車へと戻っていった。

ダメもとで波チェックしにきた先でサーフィンを楽しんでいるサーファーの姿を目撃したら、できる波なのかと思ってしまいがちであるが、そこはプロの中でも数少ないハワイでの実績を持つ松岡慧斗と村上舜と村上蓮。

ここで海に入らず車に戻った2名の方たちの判断は正しいと思った。

Keito Matsuoka.

 

そんな中でも数少ない良い波を見極めて掴み、チューブにねじ込んでは潰され、時にはテイクオフからいびつに掘れ上がる波に喰われるかのごとくパーリングを繰り返しながらも、見事なチューブライディングをメイクしてくれたのは松岡慧斗と村上舜。

【シークエンス・オブ・ザ日本海】ジャンクな頭半オーバーのオンショア・コンディションで数少ない良い波を見極めて抜けてきたフロントサイド・チューブ by 松岡慧斗

【シークエンス・オブ・ザ11/10(土)】ワイルドなオンショア・チューブでのバックサイド・グラブレール by 村上舜

 

村上蓮もチューブこそメイクできなかったが恐れ知らずのレイト・テイクオフからのハードワイプアウトを繰り返しながらも、スタイリッシュなターン、そして無謀とも思えるダンパー波に対するチューブアプローチとエキサイティングなライディングを見せてくれた。

Ren Murakami.

Shun Murakami.

 

本当だったら波を外したに等しかった今回の日本海トリップ2018 vol.1。

しかし、どんなハードコンディションであろうと、波さえあれば最高のアーティクルに変えてしまうのは、松岡慧斗、村上舜、村上蓮といった今回のメンバーたちならではと言って過言ではないだろう。

「次はもっと良い時を狙ってこよう」

「そうですね。絶対に当てたいですね」

Shun & Keito.

 

セッション終了後、夕陽に染まる日本海の荒波を眺めながら、松岡慧斗と村上舜は日本海の波に対するリベンジを誓った。

しかし、このトリップがこれから彼らが巻き起こすこととなる新たなムーブメントの第一歩であったことは、この時まだ誰も知る由もなかった。

 

日本海トリップvol.2も近日公開予定!

果たして彼らは日本海で最高の波に出逢い、リベンジを果たすことができたのか!?

そちらの方も乞うご期待ください!!

 

 

 

yoge
サーフィン・プレビュー/吉田憲右著・泉書房、古都鎌倉ミステリー旅/吉田憲右著・コスミック出版など数々の書籍を発行し、2000年にTRANSWORLD SURFの外部スタッフとなったのをきっかけにメディア界に参入。 2001年から2009年10月まで月刊SURFING WORLDの編集部兼カメラマンとして勤務。 その経験と共に、第1回NSA東日本サーフィン選手権大会Jrクラス3位、2年連続THE SURFSKATERS総合チャンプなどテストライダーとして培ってきた経歴を活かし、サーフィンを軸としたスケートボード、スノーボード、ミュージック、アート全般をひとつのコーストカルチャーとしてとらえ、心の赴くままにシャッターを押し、発信し続ける。 >>>出版物 >>>プライベート撮影問い合わせ