Photos by WSL. Text by colorsmagyoge.

能登地震で被害に遭われた皆さま、心よりお見舞い申し上げます。

未だ救助、復興活動が難航する中、1日でも早い復興を心よりお祈りします。

日本時間の2/12(月)早朝。

2年連続ワールドチャンプFilipe Toledoが2024年CTを一年間休業する決意を表明したことをWSLが正式に発表した。

下記はFilipe Toledoによるコメント。

「本日、2024年CTに参戦しないことを発表するのはとても残念なことです。自分の周りにいる近い人々との数日間議論し、悩み抜いた末、この決断を下すに至りました。WSLはとても協力的で2025年のワイルドカードを与えてくれたことにとても感謝しております。これまで以上に良い状態で戻ってくることに専念する所存であります。これまで僕は怪我だけでなくメンタルヘルスの問題についても正直に話してきました。過去10年間、世界最高レベルの中での競争は大きな負担を伴うもので、次のステージに向けて回復するためにも休憩が必要です。CTのプラットフォームは僕に全てを与えてくれました。想像もできなかった方法で家族をサポートしてくれ、信じられないほどの経験をさせてくれる夢のような生活でした。本当に感謝しかありません。男女問わずCTに参加している選手全員をとても尊敬しています。みんな素晴らしい仲間です。」

「僕はこのスポーツに対して熱い情熱を持っています。だからこそこれまで以上に強くなって戻ってこれるように完全に回復するには少し時間が必要です。家族、友達、スポンサー、そしてWSLのサポートと忠誠心に感謝しています。世界中のファンがこの僕の決断を理解し、来年CTに戻るときにはまた応援してくれることを願っております。ほかの選手たちにとって今シーズンのCTが素晴らしいものとなることを祈っております。」

WSLスポーツチーフのJessi Miley-Dyerは、

「最高レベルでの競技に全力で挑むには、全てを費やす可能性があります。私たちは一歩退いて心身の健康を優先するというFilipe Toledoの決断を支持します。私たちは彼が今年回復するための時間とスペースを持っていることを願っており、2025年にワイルドカードを通じて世界最高の選手の一人として戻ってくるのを楽しみにしてます。」

上記のコメントにあるように、Filipe Toledoはワイルドカードで2025年CTに帰ってくることとなっている。

2022年、2023年と2年連続ワールドチャンプに輝いたFilipe Toledoは2013年に17歳で初めてCT入りして以来、通算CT17勝を挙げ、そのうち4勝は2023年に達成された。


今回のFilipe Toledo欠場により、モロッコ初のCTサーファーRamzi Boukhiamにそのスポットを獲得!

2023年は足首の負傷によりCT欠場を余儀なくされたRamai Boukhiamだが、今シーズンは大きなチャンスを掴む形となり、その活躍に注目が集まる!

Ramai Boukhiam.

これはただの考察であるが、

今回のFilipe Toledoの決意により、ドリームツアーと呼ばれるCTの表には見えない負の一面を垣間見た気がした。

2011年。

WSLがまだASPだった当時、ニューヨークのロングビーチで開催されたQuiksilver Proで永遠のアンチヒーローBobby MartinezがLIVE中継のインタビューを通して選手としての思い切った正直な意見を述べた歴史的な瞬間を思い出さずにはいられない。

年間を通したtoo muchなほどのコンテストの数の多さと複雑なランキング制度、ジャッジ基準に関する異論。

Bobby Martinezがここで一石を投じたことも一因となり、2015年にASPはWSLへと生まれ変わり、様々な改善がなされて現在に至るが、しかし実際に世界のプロサーフィンは世界のプロテニスツアーと同じようになってしまった。

結局Bobby Martinezがこの時に公の場で放った正直な選手としての意見は競技サーフィンを変えることはできなかったが、プロサーファーとして競技以外の選択肢を切り開く大きな功績となった。

2023年には、選手たちや世界中の熱狂的ファンたちの多くから批判を浴びながらも、CT中盤でボーダーライン以下のランキングのCT選手がCTから脱落するミッドシーズン・カット制度が導入された。

この新制度によって選手たちの精神的負担が倍増したことは言うまでもない。

選手たちがより良い環境で競技に臨むことよりも、CT中盤戦の視聴率向上をはかって収益を上げたいというビジネス面を最優先するのが現在のWSLの実態であると言って過言ではないだろう。

CTは年間10戦。

CT残留を強いられるCTサーファーはそれに加えてCS参戦を強いられることとなり、CT入りを目指すサーファーは各リージョンのQSを転戦してポイントを稼ぎ、そこで上位に食い込んで初めてCSに参戦することができる。

移動、試合、移動、試合、移動、試合のあっという間の一年間。

いくら世界中を旅することができるとは言え、それは決して我々の多くが考えるような自由気ままな観光旅行とは程遠く、言葉も通じない土地でのハードワークに他ならない。

波に乗ることを純粋に楽しみ、海、自然の偉大さから感謝と敬意を体得し、愛と思いやりと協調性を分かち合うアロハスピリッツから生まれて世界に広まったサーフィンが持つ本質。

その本質から逆行して波を奪い合い、トップになるために競い合って蹴落とし合い戦い続けて勝つことこそが美とされる競技としてのサーフィン。

サーフィンはこのままどこに向かうのか?!

答えはひとつではないだろうし、むしろ答えなどないのかも知れないが。

人生は一度切り。

過ぎた時間はどんなに悔いても戻ってこない。

家族との時間は誰にとっても何よりも替えがたい人生の宝であるはずであり、それを犠牲にし続けて世界一に2度輝いたFilipe Toledoがこの1年間充電を満タンにしてさらにパワーアップを果たし、2025年CTに帰ってきてくれることを楽しみにしたい!

yoge
サーフィン・プレビュー/吉田憲右著・泉書房、古都鎌倉ミステリー旅/吉田憲右著・コスミック出版など数々の書籍を発行し、2000年にTRANSWORLD SURFの外部スタッフとなったのをきっかけにメディア界に参入。 2001年から2009年10月まで月刊SURFING WORLDの編集部兼カメラマンとして勤務。 その経験と共に、第1回NSA東日本サーフィン選手権大会Jrクラス3位、2年連続THE SURFSKATERS総合チャンプなどテストライダーとして培ってきた経歴を活かし、サーフィンを軸としたスケートボード、スノーボード、ミュージック、アート全般をひとつのコーストカルチャーとしてとらえ、心の赴くままにシャッターを押し、発信し続ける。 >>>出版物 >>>プライベート撮影問い合わせ