Movie by S.LEAGUE OFFICIAL. Text by colorsmagyoge.

JPSAが生まれ変わり、新たにSリーグが発足された。

その最新情報を伝えるプレゼンテーションが2/14(水)パシフィコ横浜で開催されたインタースタイルにて行われ、colorsmagも現場に立ち会ったが、情報量が多く、手元に資料もないため誤った内容の記事を書くわけにもいかないと思い触れずにいた。

しかし、つい先日、そのプレゼンテーションの一部始終を収録した動画がSリーグのオフィシャルYoutubeにて公開された。

2024年2月時点でSリーグが目指す方向性が誰にでもわかる最新動画をまずご覧ください!

グランドファイナル戦はエキサイティングなものとなること間違いナシ!

これを観て頂いた上で、下記はあくまでもcolorsmag的考察でありますが、まず率直に言って、JPSAもある意味マンネリ化しつつあった中でのこの改革は新鮮で素晴らしいと思った。

これは間違いなく現在WSLが行なっているワールドチャンプ決定戦”WSL FINAL 5”を手本としており、特に2025年5月に志田下で予定されているグランドファイナル戦はエキサイティングなものとなるに違いないだろう。

また、25-26シーズンから24-25シーズンの最終ランキングを元にショートーボード男子上位29位まで、ショートボード女子上位13位まで、ロングボード男子上位22位まで、ロングボード女子上位10位までが参加できる日本のCT的なS1、それ以下のランキングの選手たちがクオリファイを目指す日本のCS的なS2に分かれるとのことだが、これについてはプロサーファーにとっては敷居が上がったと言えると思う。

例えば、野球やサッカーをはじめとした他のプロスポーツでも常に注目されるのは1軍であり、2軍はあくまでも2軍であり、一般認識としてはプロなのかプロでないのか微妙な立ち位置のプロ選手というのが2軍プロであると思うからだ。

そういった意味では、日本国内でプロサーファーとして活躍するには、S1リーグに出場できる選手というのは最低条件となり得るわけで、それ以外であれば都筑有夢路のようにCT入りした実績を持っていたりオリンピックの銅メダリストであったりと、Sリーグの枠を超越した世界の舞台で実績を残すしかない。

しかし、現状として十分生計を立てていけるほどの収入があるプロサーファーというのはごく僅かであることも現実であり、ある意味プロサーファーとして自分の方向性を早い段階で見定めるには、今までのJPSAのようにプロなら誰でも参加できるシステムよりは好条件なのかも知れない。

例えば、コンテストに見切りをつけてプロゴルファーのようにレッスンプロになる道を考えたり、波を求めて旅をして映像などを発信してサーフィンのアドベンチャー的部分を伝えるフリーサーファーに転向してスポンサーを募るなど、S1に入れなかった時点でいろいろ身の振りを考えさせられることになるからだ。

2部リーグ制にした際に想定できるリスクを考えてみた

S2リーグのライブ中継や会場に足を運んでの観戦は、S1がある以上あまり価値がないものとなり、おそらく選手の身内や会場周辺の人たちだけに限られる規模となるだろう。

しかしその一方でS1に対する注目度は上がるかも知れない。

ここでかも知れないと表現しているのは、もしかしたら注目度やLIVEの視聴数が全体的に落ちる可能性もなきにしろあらずと思うからだ。

例えば今までJPSAのライブ中継を観ていた人たちの割合の中で、出場している選手たちの身内やスポンサーなどの関係者たちが多くを占めていたとしたら、S1に出場できる選手たちの数がJPSAより少なくなるのだからそのLIVE視聴数も落ちてしまっても致し方ないと思うからである。

とにかく、2部リーグ制にすることによってS2は本当に観る価値のないプロの試合となり兼ねず、S1はその価値は上がっても観る人の数が減るかも知れない危険性も秘めていることは否めない。

後もう一つ心配なのは、S1の試合を1シーズンで3から5戦、それに加えてS2の試合を何戦行なうのかについてはこのプレゼンテーションでは触れていないので不明であるが、果たしてそこまでたくさん試合をできるほど多くのお金を集めることができるのかということ。

もし自分がサーフィンを盛り上げたい熱い気持ちがある企業でお金を出す側であったら、例え安くてもS2にはお金を出したくないと思う。

どうせなら少し高くてもS1に出したい。

安物買いの銭失いになりたくない。

そういった未知なるリスクを考えると、別にグランドファイナル戦がある以上、2部リーグ制にこだわることはそこまで重要ではない気がしないでもない。

いずれにしても結果として日本のサーフィンがより盛り上がることが一番大事な目標であって、その方法や形式は柔軟性を持って臨機応変でいいと思う。

とにかく、チェアマンに大野Mar修聖、サブチェアマンに田中樹といったスター選手が就任しているのだからよりエキサイティングなプロツアーになることは間違いないし、今まで以上に応援したい気持ちでいっぱいである。

25-26から始まるアジア各国代表によるSリーグ・プレミアムツアー

今回のSリーグの発足によって、プレゼンテーションの壇上でさわかみグループ代表の澤上龍氏のお話しに、「Sリーグの土台をしっかりと固めることによってサーフィンのレベルを全体的に上げていき、その先にある世界への道筋を立てる」とあった。

これは、25-26から始まるアジア各国代表選手たちがアジアが誇るワールドクラスの波を舞台に戦い、アジアチャンプを決めるSリーグ・プレミアムツアーが実現することで日本のサーフィンレベルはより高まることが予想される。

が、しかし、「その先にある世界への道筋を立てる」のは、はっきり言って難しいのではないかと思う。

もし世界に出るのであれば、都筑有夢路のようにJPSAをスキップして目標を世界の1本に絞り、QSやCSツアーを転戦し続け、世界での経験値を少しでも多く積んでいく方法が一番近道だと思うからだ。

多分1、2年Sリーグに出て日本一やアジア一になってから世界に出るのと、そのまま世界にもまれるのと大きな差があるのだと思う。

実際に五十嵐カノアはJPSAを転戦したことはない。

彼はカリフォルニアで生まれ育ったアメリカ人日本人であり、CTで戦うということは、我々一般サーファーが「うわ~こんな海死んじゃうよ絶対ムリ」と思うようなハードコンディションな海でもある程度自由自在にハンドリングできるスキルとメンタリティーを兼ね備える必要があるのだから、それ相応の過酷な海を練習場として選び、そこに身を置き続けなくてはならず、五十嵐カノアはJPSAよりもそのことを優先したからこそ今の彼がいるのだと思う。

そういった意味でもしSリーグが「世界への道筋を立てる」と言うのであれば、まずせめてS1だけでも会場となる海を選別し直す必要があると思う。

例えば、仙台新港とか、ここからはポイント名をはっきり書くとローカルサーファーに失礼かも知れないので茶濁させて頂くが、世界からもトップサーファーが訪れたりもする西日本の某河口とか、宮崎県の空港の近くにあるグリグリチューブの某ビーチブレイクとか、もちろん新島もあっていいと思うし、とにかく一般サーファーが太刀打ちできないような海を会場としていくことで、プロ選手自体が普段から練習するために選ぶ海も変わってくると思うし、身体も一回り大きくなる必要性を迫られると思う。

日本独自のサーフィンは大事です

いずれにしても、日本は日本のサーフィンで良いのではないかと思う。

別に世界に行くことが全てではない。

さわかみグループ代表の澤上龍氏のお話しにあったように、Sリーグに期待する横の動きとして「もっと多くの人にサーフィンを楽しんでもらう、より多くの人に海を楽しんでもらう」上で、地域活性化を含め、日本国内で活動するプロサーファーは絶対に必要であり、活躍の場はたくさんある。

別にもっと敷居を下げて、大会期間中に来場客が参加できたり体験型のプロサーファーによる催し物があっても良いと思う。

そこで1人でも多くのファンの心を掴むことができれば、年々一般の来場者やLIVE中継観戦者を増やす糸口になるだろうし、もっと日本のサーフィンのファンを増やすためのファンサ的な活動は日本国内のプロサーファーとしてあっても良いと思う。

しかし、純粋な子供の頃に抱く夢のプロサーファーとは、世界に出て五十嵐カノアのようなスター選手になり、一生食える分のお金を稼ぐことに尽きると思う。

だから今世界を目指すキッズサーファーたちは、その純粋な気持ちのまま、例えどんな逆境や壁に突き当たってもそれを打破して成長し続け、日本をスキップしてでも世界に挑戦し続けてほしい。

夢に敗れることを恐れるな。

例え夢が叶わなくとも、到達したその先にこそ見えてくる道だってあるはずだ。

いずれにしても、今後も日本独自のサーフィンを発展させていくことはサーフィンを通して日本各地の地域活性化をはかる上でとても大切であるし、そんな日本が誇る独自のサーフカルチャーをバックボーンとする日本人プロサーファーが世界の舞台で活躍する日を実現させることも大切である。


>>Sリーグオフィシャルサイト



yoge
サーフィン・プレビュー/吉田憲右著・泉書房、古都鎌倉ミステリー旅/吉田憲右著・コスミック出版など数々の書籍を発行し、2000年にTRANSWORLD SURFの外部スタッフとなったのをきっかけにメディア界に参入。 2001年から2009年10月まで月刊SURFING WORLDの編集部兼カメラマンとして勤務。 その経験と共に、第1回NSA東日本サーフィン選手権大会Jrクラス3位、2年連続THE SURFSKATERS総合チャンプなどテストライダーとして培ってきた経歴を活かし、サーフィンを軸としたスケートボード、スノーボード、ミュージック、アート全般をひとつのコーストカルチャーとしてとらえ、心の赴くままにシャッターを押し、発信し続ける。 >>>出版物 >>>プライベート撮影問い合わせ