f/s Grab Air Reverse by Shun Murakami at Shizunami Surf Stadium. Photo by colorsmagyoge.

タヒチのチョープーで開催された2024年パリ・オリンピックを終え、すでに世界中のコンテスト・サーフシーンが目を向けているのは2028年LAオリンピック。

現時点ではUS OPENの会場として長い歴史を持つハンティントンビーチが会場になるというのが最も有力視されている中、早くもアメリカでは次のオリンピック・サーフィン競技を海でやるべきか否か、大きな議論になっている。

SURFER magazineの記事によれば、

「海だけでなく、一度ウェイブプールでもオリンピックをやってみるべきだと思います。」11×ワールドチャンプのKelly Slaterは言った。「オリンピックはワールドツアーのサーフィンとはまったく異なるイベントだと思います。それぞれのサーファーが違ったマニューバーで組み立てるライディング全体のクオリティーを見比べるには、同じ波を平等に生み出せるウェイブプールで開催されるべきだと思います。海でのコンテストでは、運が大きな要素を占めます。例えば今回チョープーでのパリ・オリンピックでは、波が来ないヒートでは幸運を掴むことが勝利の鍵を握りました。同じ波に乗って競い合うことで、サーフィンを知らない一般の人にとっても勝敗を理解しやすくなります。」

Image by Grag Webber.

確かに、サーフィンのフィールドである海は自然であり、同じ波は二度と来ない。

だからこそ、それを理解した上で年間9から10試合、世界中のワールドレベルの波がブレイクする海を会場に戦って年間ランキングとワールドチャンプを決めるワールドツアーと、たった1戦のみで金メダリストを決めるオリンピックでは大きな違いがあり過ぎると言える。

サーフィンという競技は他のスポーツの常識では考えられないレベルで、運が勝敗を大きく左右するスポーツである。

そのことは、海をよく知るサーファーであれば誰でも理解できるはずだ。

実際に、パリ・オリンピックの最終日は、なかなか波が来ない難しいコンディションの中で行なわれ、日本代表選手の中で最も勝ち上がった稲葉玲王はクォーターファイナルでセットを掴んでチューブをメイクし、このヒートにおけるハイエスト・スコアとなる7.33ptを持っていたにも関わらず、あと3ptちょっとのバックアップスコアを稼げる波を掴むチャンスに恵まれず、悔しくも敗退することとなった。

Reo Inaba, 2024Paris Olympic. Photo by ISA / Beatriz Ryder.

さらに、ポッドキャスター兼コメディアンで元プロサーファーであるStarling Spencerは、自らの番組内でパリ・オリンピックの最終日を振り返り、次のようにコメントした。

「本当にがっかりしました。準決勝ではJack Robinsonが良い波を2本キャッチしました。でも大会3日目まで絶好調だったGabriel Medinaはたった1本しか波に乗れなかったのでファイナルに進めなかった。そしてファイナルではKauli Vaastが2本良い波を掴みましたが、逆にJack Robinsonはまったく波に乗れず、最初から最後までずっと波待ちすることしかできませんでした。私はこれを観て、絶対に何かを変えなくてはいけないと思いました。(中略)私は全員が平等に波に乗れるウェイブプールでオリンピックを観てみたいです。」

実際にStarling Spencerはこの発言をした後、この意見を世論調査を含める質問として投げかけるべく、インスタグラムに投稿した。

すると、82%の人が、オリンピックのサーフィンにはウェイブプールでやる新しい形式が必要だと回答したのである。

果たして、2028年LAオリンピックもやはり海でやることとなるのか、それともウェイブプールでやることとなるのか!?

いずれにしてもこれは、LAオリンピックまでのここ数年間、世界中のサーファーの間で議論される話題になるに違いないだろう。

yoge
サーフィン・プレビュー/吉田憲右著・泉書房、古都鎌倉ミステリー旅/吉田憲右著・コスミック出版など数々の書籍を発行し、2000年にTRANSWORLD SURFの外部スタッフとなったのをきっかけにメディア界に参入。 2001年から2009年10月まで月刊SURFING WORLDの編集部兼カメラマンとして勤務。 その経験と共に、第1回NSA東日本サーフィン選手権大会Jrクラス3位、2年連続THE SURFSKATERS総合チャンプなどテストライダーとして培ってきた経歴を活かし、サーフィンを軸としたスケートボード、スノーボード、ミュージック、アート全般をひとつのコーストカルチャーとしてとらえ、心の赴くままにシャッターを押し、発信し続ける。 >>>出版物 >>>プライベート撮影問い合わせ