Movie by LMBK surf house. Text by colorsmagyoge.

日本人サーファーにも馴染みの深いインドネシアが誇る世界的サーフパラダイス、バリ。

その中でも世界指折りのパーフェクト・ロング・レフトとして知られるウルワツで、現在、ウルワツ寺院保護を目的とした崖の補強、および防潮堤と海岸道路を建設する計画が進行しており、物議を醸し出している。

この大規模な工事は1992年に起きた大地震によりウルワツ寺院やルフル寺院周辺の崖に大きな亀裂が発生し、その数年後にはその側面にさらなる亀裂が現れたため、ヒンドゥー教の象徴的な寺院を保護するべくバリ島政府によって500万ドルの予算が割り当てられて計画されたもの。

数日前には、ビンギンとインポッシブルの間にある崖が建設機械によって真っ平に削り取られ、真っ白い岩が海に砕け落ちていく映像がSNSに出回り、大きなショックを与えた。

これはアマリ・ラグジュアリー・レジデンスという新しい開発物件を手掛けるバリ島のミラ・グループによる作業の一部を捉えた映像となっており、ミラ・グループはこれに対し、

「崖面の一部の緩みが掘削破片の落下を引き起こした。(中略)海岸は少なくとも28日以内に完全に元の状態に修復します。」

と返答。

しかし、これを見ただけでも今回の大規模な工事がウルワツはもちろん、その周辺の海洋環境および波質に大きな影響を与える可能性は否定できないのは明らかである。

また、@canggu.info が8月上旬にアップしたウルワツ防潮堤と海岸道路の完成予想イメージ映像に対し、Kelly Slaterは、

「最悪な映像だ。すべてを台無しにするつもりだ。実際に政府には国民を助けることに取り組んでもらいたい。これは間違いなく修復不可能な損害を引き起こし兼ねない。」

とコメント。

さらに、サーフィンが長期的な沿岸保全、生態系保護の手段となる世界を目指す非営利団体Save The Wavesは、下記のような声明を発表。

「ウルワツを囲む珊瑚礁はワールドクラスの波を生み出すだけでなく、ジュゴン、ウミヘビ、メジロザメ、ウミガメなど信じられないほど多様な海洋生物が生息する場所でもあります。シャチが波打ち際で目撃されることもあるこの地域の生物多様性は非常に顕著で、この生態系に何らかの混乱が生じれば深刻かつ永続的な悪影響をもらたす可能性は否めません。さらにウルワツにおけるサーフツーリズムは毎年235,000人がこの地域を訪れると言われ、地元経済に3,500万ドル以上を与える収入源となっている。今回の工事では、ウルワツのサーフポイントとしての価値や天然資源をどのようにして扱うべきかという点を問われることになります。環境とサーフィンの両方に関して透明性がないままこのプロジェクトが進められていることが懸念されます。」

バリがここまで著しく経済発展してきた中で、サーフィンが大きな存在であったことは否めない事実であろう。

そしてそんなバリの名を世界中に知らしめるきっかけとなったウツワツの波は、まさにその存在自体が神だと言って過言ではない。

しかし、さらなる経済発展を目指していく中で、バリはその神すら金で売り飛ばしてしまったのか。

この大規模な工事は、2024年の年末までに完成予定。

バリの政府が主導となって進めている公共事業であることから、デモや反対運動をいくらしたところで絶対に覆るものではないだろう。

果たして、バリのウルワツはどうなってしまうのか!?

その答えは神のみぞ知る。

yoge
サーフィン・プレビュー/吉田憲右著・泉書房、古都鎌倉ミステリー旅/吉田憲右著・コスミック出版など数々の書籍を発行し、2000年にTRANSWORLD SURFの外部スタッフとなったのをきっかけにメディア界に参入。 2001年から2009年10月まで月刊SURFING WORLDの編集部兼カメラマンとして勤務。 その経験と共に、第1回NSA東日本サーフィン選手権大会Jrクラス3位、2年連続THE SURFSKATERS総合チャンプなどテストライダーとして培ってきた経歴を活かし、サーフィンを軸としたスケートボード、スノーボード、ミュージック、アート全般をひとつのコーストカルチャーとしてとらえ、心の赴くままにシャッターを押し、発信し続ける。 >>>出版物 >>>プライベート撮影問い合わせ