Yosuke Iha, Shino Matsuda, Yuzuki Iha.

Photos & Text by colorsmagyoge.

11月末のとある日。

パリ・オリンピック日本代表選手の松田詩野と、STAB HIGH JAPANに招待選手として出場し、5位という成績を残した天才女子中学生エアリスト伊波優月、そしてその弟であり、小学生にしてすでにサーフィンとスケートボードを高次元で融合させたネクストレベルなスタイルを持つcolorsmag的将来バケモノ確定な鬼要チェック・スーパーキッズ伊波洋介の3名が静波サーフスタジアムを訪れた。

その目的は、反復練習が可能なウェイブプールの波で、エアのカゲ練をするため。

しかし、こうしてcolorsmagから記事として発信してしまえば、まるでその秘密のカゲ練をバラしてしまうも同然であるが。

Shino Matsuda & Ryu Nakamura at somewhere in South Chiba.

実はこの日のたった数日前に、プロサーファー中村竜に誘われたHLNAの撮影で一緒だった松田詩野と良い波を求めて南千葉から北上した際に、ランチがてら立ち寄った伊波兄妹の実家であるJFスケートパーク東浪見で初めて出会い、意気投合したこの3人。

まるで見えない磁場に引き寄せられるかの如く導かれたこのスーパーセッションは、彼らにとってウォーミングアップには最適なエキスパート用の波からスタートを切った。

まずはリッピングで身体を温めたところで、STAB HIGH JAPANで使われたエア専用のハイボールと呼ばれる波でエアの練習を開始。

Shino Matsuda.

Yosuke Iha.

Yuzuki Iha.

1本目からビッタビタのフロントサイド・ストレートエアを決めてくるのは伊波優月。

Yuzuki Iha.

さらに弟の伊波洋介も2本目でいきなりフロントサイド・インディグラブ・エアリバースをいとも簡単そうにメイク。

それ以降はひたすらカラップフリップにチャレンジし始める。

Yosuke Iha.

結局伊波洋介はこの日カラップフリップをメイクすることができなかった。

しかし、まだこの時この場にいた誰もが、この数日後に伊波洋介が見事カラップフリップをメイクしてしまうことを知る由はなかった。

その一方で松田詩野は、見た目以上にエンドのエアセクションにベストタイミングで突入するのが難しいこの波に手こずりまくり、ワイプアウトを繰り返す。

Shino Matsuda.

松田詩野の大ファンで、毎回インスタをチェックし、乗り方から何から真似するくらい詩野ちゃんに憧れている伊波優月が目の前でバチバチにエアを連発する中、普通に考えたらオリンピアンとしてのプライドやらが邪魔して平常心を保てなくなってもおかしくない状況に思えた。

しかしそんな中でも、どうアプローチしたらベストなタイミングでエアセクションに入れるのかアドバイスを受け入れ、トライアンドエラーを繰り返していく。

まさに最大の敵は己の中にあり。

周りの雰囲気に飲み込まれることなく、自分が今何をすべきかにのみ集中をし、現実を受け入れながら挑戦を繰り返す松田詩野の姿に、なぜ彼女が一流アスリートであるのか、そのことを改めて痛感させられた。

Shino Matsuda.

さすが日本を代表する世界的なトッププロというだけあり、飲み込みも早く、セッションも後半に近づいた頃になるとまさかのフロントサイド・インディ・グラブエアをメイク!

と思いきや、ランディングした後のホワイトウォーターに押し上げられ、インコンプリートとなってしまう。

「惜しい!もうちょっと」

その場にいるみんなが、松田詩野に応援のパワーを送り、一つになっていく。

が、その次の波ではまたしてもワイプアウト。

近づいては遠のくメイクまでの道のり。

時は無常に迫り、いよいよラストの波を迎える。

その場にいる全員が見守る中、フルスピードで波を滑走していく松田詩野。

今度は今までで1番ベストなタイミングでエアセクションに突入し、波頭から飛翔した。

Shino Matsuda.

「おおー!!」

松田詩野は、最後の最後でしっかりとエアをメイクしてみせたのであった。

Shino Matsuda.

その場にいる全員から歓声が上がる。

すでに小中学生にして東浪見まで歩いていける距離にある実家にバートランプとプールコーピング付きのボウルを持つ最高の環境で育ち、スケートボードでのエアはお手のものな伊波兄弟にとって、その感覚をサーフィンに落とし込むのは容易であり、そのことはスケートボードも得意なことで知られる3×ワールドチャンプJohn John FlorenceがMick Fanningたち以前の世代とは一味違ったネクストレベルなサーフスタイルで世界のサーフシーンに革命を巻き起こしたことでも周知の通りである。

今回松田詩野が1日でエアをメイクすることができたのは湘南茅ヶ崎出身の彼女が元々スケートボードもやっていたからこそだと言って過言ではなかった。

JF Skate Park Torami.

「あーもっと練習したいなぁ」

と、2人で仲良く温水ジャグジーに浸かる松田詩野と伊波優月。

Yuzuki Iha & Shino Matsuda.

世代は違うが、お互いを高め合える素晴らしい関係にあるこの2人に、これから迎えるに違いない明るい未来の日本の女性サーフシーンを垣間見た。

yoge
サーフィン・プレビュー/吉田憲右著・泉書房、古都鎌倉ミステリー旅/吉田憲右著・コスミック出版など数々の書籍を発行し、2000年にTRANSWORLD SURFの外部スタッフとなったのをきっかけにメディア界に参入。 2001年から2009年10月まで月刊SURFING WORLDの編集部兼カメラマンとして勤務。 その経験と共に、第1回NSA東日本サーフィン選手権大会Jrクラス3位、2年連続THE SURFSKATERS総合チャンプなどテストライダーとして培ってきた経歴を活かし、サーフィンを軸としたスケートボード、スノーボード、ミュージック、アート全般をひとつのコーストカルチャーとしてとらえ、心の赴くままにシャッターを押し、発信し続ける。 >>>出版物 >>>プライベート撮影問い合わせ