迎えたDAY8は、
この2日間サーフィンをした
ロングウォールの続く某リーフブレイクではなく、
さらにサイズがあり、風をかわしている場所を求め、
1時間ほど車を走らせることに。

 行く途中に数カ所のポイントをチェックしたが、
どこもサイズが小さかったり、風が合っていなかったりと
なかなか心にGoサインが出ない状態。

 そこで、地図を片手に海岸線の地形を見極め、
うまく風をかわしてそうなとある海岸へ向かうことに。
 そこは、我々の知識の範囲でいえば、
まだ誰も足を踏み入れていない海岸だった。

 これまで走ってきたアスファルトの道路から、
森の間を通る林道へ突入。
 整備されていない凸凹道に、
車が大きく揺れる。
 未知なる世界へと飛び込んでいった。 


Going off road to find new surfpoint in Deep Hokkaido.

 その途中、分かれ道があり、
まずは真ん中の道を真っすぐと進んでいくと、
ある程度行ったところで、
後ろの車が着いてきていないことに気がついた。

 後ろの車には、関谷利博プロや金田輝士プロをはじめ、
北浦俵太プロなどのライダー陣営の面々が乗っていた。
「何かあったんじゃないか?」
 と、その不安を最初に口に出したのは
grace surfboards社長&シェイパーである
谷内太郎だった。

 その言葉に含まれた奇妙な嫌な予感は見事的中、
なんと後ろの車はだいぶ離されてしまっていたようで、
途中の分かれ道を一つ間違えて左に入ってしまい、
その先にあった泥沼地帯でスタックしていたのだった。

 一面見渡す限り草原が広がっており、
その先にはだた水平線が見え、
その景色を高い高い北海道の大きな空が覆っているという
普段の生活ではあり得ない野性的周辺環境状態のなか、
もちろん携帯電話の電波が届くはずもなく、
ただ助けがくることを信じて待つしかなかったライダーチームは、
我々が助っ人としてたどり着いたときには、
すでに自分たちができる範囲の努力は尽くしたことを
証明するかのように
その誰もが泥まみれの状態であった。

 ここで最初にライダーチームがスタックしていたことに
気がついた北海道サーフィンのパイオニアでもある
田川昇氏が、これまで数十年に渡って
北海道の多くの未開のポイントを開拓してきたその経験から、
自然とリーダーシップをとりはじめ、
そのおかげで皆が力を合わせ、ひとつとなり、
見事この危機を乗り越えることができたのだった。

 この周辺には熊出没の危険もあり、
まさに一歩間違えれば取り返しのつかない状況に陥る
可能性が高いワイルドな状況であるが、
無事だった以上、
サーフ・サーチ・アドベンチャーの醍醐味を
肌で感じることができる貴重な出来事となった。
 ここでさらに車で侵入していくことは危険と判断した
grace teamは、歩いて海が見える場所まで歩いていくことに。

 すると、その先には、
頭オーバーで風をかわす、
天然ポケットビーチがあることを確認!
 さらには、車でビーチフロントまで入れることまで
判明した。

 早速grace teamによるセッションがスタート。
 流れも地形も何もわからぬ未知なるこのポイントに
一番乗りで入っていったのは
渡邉優太郎だった。


Yutaro Watanabe.


Hyota Kitaura.


Aoi Watanabe.


Kiyoshi Kaneda.

 予想以上にパワフルでライダブルなポイントで、
ライダーたちはみな、思い思いにサーフィンを楽しんでいるようすだった。
 午後はセイコーマートによりつつ、
さらに動いて数カ所のポイントをチェックし、
結局はこの新しいポイント”スタックス”に戻ってくることとなった。
 このスタックスというポイント名は、
今回一番最初にこのポイントに入水した渡邉優太郎が、
向かう途中に車がスタックしたことから取った
ネーミングで、
今回のクルー全員、
このポイントに再び足を踏み入れるチャンスがあったなら、
この日の出来事を鮮明に思い出すに違いないだろう。

 夕方、風が弱まり始め、
スタックスがまた違った魅力的な表情を見せはじめた。
 そのことをいち早く察知した北浦俵太の、
サーフボードにワックスを塗る音が、
風に揺れる草の音と共に聞こえてくる。
 今回開拓したスタックスにおける2ラウンド目となる、
夕方のセッションが、はじまろうとしていた。

yoge
サーフィン・プレビュー/吉田憲右著・泉書房、古都鎌倉ミステリー旅/吉田憲右著・コスミック出版など数々の書籍を発行し、2000年にTRANSWORLD SURFの外部スタッフとなったのをきっかけにメディア界に参入。 2001年から2009年10月まで月刊SURFING WORLDの編集部兼カメラマンとして勤務。 その経験と共に、第1回NSA東日本サーフィン選手権大会Jrクラス3位、2年連続THE SURFSKATERS総合チャンプなどテストライダーとして培ってきた経歴を活かし、サーフィンを軸としたスケートボード、スノーボード、ミュージック、アート全般をひとつのコーストカルチャーとしてとらえ、心の赴くままにシャッターを押し、発信し続ける。 >>>出版物 >>>プライベート撮影問い合わせ